紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~
「とにかく、あの雷鳴の中心へ向かおう。
ついてくる勇気のある者だけ、ついてこい」
雲から柱のように落ち続ける雷鳴も、カートの仕業に違いない。
ランスロットについて行こうとするのは、騎士団の高位の者と、組織のオーランドの兄、フェイ、アリスと少しの者だけだった。
「……そうか。他のものは、ロンドンへ向かえ。
悪魔が入って来られないように、結界を作っておくのだ」
ランスロットは言い残し、精霊とともに移動魔法陣を呼び出す。
……勇気なんて、今時誰も持っていないのか。
落胆する気持ちは抑えられない。
そうかもしれない。
国や市民を守るなんて使命感を持って、何物にも向かっていく勇気のあるものなど、ここにはいないのだろう。
誰もが自分の居場所を求めて、それを維持することに必死で。
誰もが、本当は戦いたくなんかなくて。
それが、特殊な力を持って生まれてしまった自分たちにとっては自然なことなのかもしれない。
自分だって、もしかしたら……。
そんな思いを振り払い、彼らもまた、最後の戦いの地へと向かった。