紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~


一方、ベッドで寝たふりのコートニーは……


自分の中に初めて生まれた感情に、戸惑っていた。


(なにこれ……)


胸が、ドキドキする。


オーランドにおいて行かれて、悲しかった。


彼がピンチにおちいっていたら、なんとか助けたいと思った。


倒れて、目が覚めたら、オーランドが目の前にいて……


心臓が、止まるかと思った。


(くっついちゃうかと思った)


首にかけていた物を見られるのは、もちろん困る。


それはそれで慌てたけど、それ以上に。


オーランドと触れ合ってしまうくらいの距離に近づいていたことが、この上なくコートニーの心臓を跳ね上がらせた。


(ぶう……)


でも、彼はそんなつもりは1ミリもなかったらしい。


優しいと思えば突き放す。

突き放したと思ったら、また優しくする。


(経験豊富なのね)


勢いで抱きついても、彼は動揺しなかった。してないように、思えた。


それがコートニーには、とても不満だった。


たった3歳の年の差が、分厚い壁に思える。


いや、二人を隔てるのは、もっと大きなものだとは、わかっているけど。


(私はオーランドから見たら、何も知らない子供なんだ)


ナンシーに捕らわれている間に与えられた本の中に、童話があった。


王子様とお姫様の、汚れなき美しい物語。


コートニーはその中で恋や愛というものがあることを知った。


キスも。抱き合うことも。


理解していたつもりだった。



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