オムレツの誘惑
始まりと終わり
 一人暮らしをはじめると、実家ではしなかったことをしなければならない。炊事、洗濯、そう、料理。
 僕は料理を学びはじめた。もちろん学びはじめている段階であり、昨今の経済情勢だとか、台所事情を鑑みると、節約の観点から学ばない手はない。
 が、ここでいささか問題がある。学ぶといってもスクール的なものに通うには費用がかかり、節約を信条としている僕にとって、負担が大きい。
 
 なので、料理について試行錯誤することにした。包丁を選び、まな板を選ぶ。レシピ本を購入し、いざ調理を開始し、レシピ本を完全に無視し、目玉焼きを作った。なぜ、レシピ本を使用しなかったかというと、調味料は複雑であり、千切りやみじん切りという技術を習得していないからだ。なのでレシピ本を無視させて頂いた。よくいうじゃないか、〝小さいことからコツコツと〟、て。まあ、それも言い訳に聞こえるが。ああ、二〇一三年の目標は、言い訳をしない、にしよう。うん。そうだ。それがいい。
 
 昨年末からはじめた料理も、比較的、包丁のカットスピードも早くなり、湯の分量、フライパンの使い方、火と按配。調味料のさじ加減。少しずつ、一歩、一歩、料理の腕が上達していくのを感じた。料理というのは不思議なもので、火でぐつぐつと煮込んでいる最中に、サラダを作ったり、火でぐつぐつ煮込んでいる最中に、使用していた調理器具を洗剤にスポンジをつけ、丹念に洗う。水で流し、汚れが用水路に向い、吸い込まれていく。一時期、汚れが用水路に吸い込まれる過程が癖になった。まあ、それはいい。
 
< 1 / 2 >

この作品をシェア

pagetop