桜廻る



……土方は、どう声をかければいいか、分からなくなった。



難しい。



雅にどんな辛い事が起こっているかは分からないけど、ひしひしと、苦しみが伝わってくる。






「……夕餉、作ってくる」






結局土方の口から出たのは、これだった。



一瞬で気まずい空気に変わり、雅は掛け布団を握りしめる。



バタンと、扉が閉まった。



雅は布団に顔を押し付け、今日の出来事が脳裏を巡り、嗚咽する。



静かに、夜は過ぎていった──。



< 56 / 419 >

この作品をシェア

pagetop