桜廻る
……土方は、どう声をかければいいか、分からなくなった。
難しい。
雅にどんな辛い事が起こっているかは分からないけど、ひしひしと、苦しみが伝わってくる。
「……夕餉、作ってくる」
結局土方の口から出たのは、これだった。
一瞬で気まずい空気に変わり、雅は掛け布団を握りしめる。
バタンと、扉が閉まった。
雅は布団に顔を押し付け、今日の出来事が脳裏を巡り、嗚咽する。
静かに、夜は過ぎていった──。