王に愛された女



 フィオーレは呟いて木から飛び降りた。

「とりあえず飯食うか。腹が減っては戦はできぬとかいうしな」

 川のほとりまで行くと、持ってきたおにぎりを出した。

 川の水を飲もうとコップを取出し、川まで歩く。

「…え?」

 フィオーレは川にコップを入れかけたところで川の中にあるものに気付いた。

「なんだ…これ?」

 目を凝らす。水の流れが速いせいで、上手く見えないが、山の形に見える。

 フィオーレは空を仰いだ。水面に映っているのだから上の方に浮いているのではないかと考えたのだ。

 だが、空は分厚い雲に覆われていて、何も見えない。

「まさか…」

 フィオーレは川に視線を戻した。

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