王に愛された女



「…俺も意味はわからない…。けど、ガブリエルの腕と同じ印が刻まれているのは気になるな…」

 オラシオンの呟きに、心が少し重くなる。

 何かよくない意味を持っているような、そんな気がした。

◇◆◇◆

 二時間も経つ頃にはガブリエルの心も幾分軽くなっていた。

「…俺、一度城下町に行ってくるよ」

 オラシオンの言葉にガブリエルは驚いた。

「急にどうしたの?」

 オラシオンの世話役の女人・ルーシィに「王様は城下町が嫌いなのです」と聞いていたからだった。

「いや…たまには外の空気も吸ってみたいと思ってな」

 オラシオンの言葉に、ガブリエルは寝所から出た。昨日とは違う服をまとい、オラシオンの斜め後ろに立つ。

「それはいいことだと思う」

 ガブリエルの言葉に、オラシオンは顔だけをこちらに向けて小さく微笑んだ。

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