王に愛された女
世話係もつけず、一人で出かけたのは初めてだった。
オラシオンは初めての経験に戸惑いつつも楽しんではいた。
奴隷売りの商人が奴隷を売っている市場に集まっているのは貴族だけではなく、安い奴隷がいないかと店の店主たちも集まっている。
店の宣伝をする気の良さそうな女将が、時折オラシオンに声をかけてきた。
この国の王であることを隠す為にオラシオンは国の民の服装をしていた。そのため、女将たちも気安く声をかけてくるのだった。
「…お兄さん、団子食べて行かないかい?東洋から新たにわたってきたお菓子だよ」
そう声をかけられたオラシオンは
「じゃあ頂こう」
断らずに店に入った。
店の中は蜘蛛の巣が張っていて、この店があまり繁盛していないことは明らかだった。
もしかしたら、こうして店の宣伝をしている女将たちも金に困っているのかもしれないとオラシオンは思った。
今度、この城下町を視察して金回りをよくするための政策を考えるべきだと思い直しつつ、団子を食べ終えてオラシオンは店を出た。