王に愛された女




 国王はそう言って、立ち上がる。

 つられてルークも立ち上がった。

「…だが、俺はそれでもガブリエルを愛している」

 国王の真剣そのものの眼差しに、ルークは圧倒された。

「王様…」

「たとえそれが禁断でもいい。掟を守ってアイツを手放すくらいなら、俺は掟を破ってまでアイツの傍にいたい」

 国王はゆっくりとした足取りで窓辺に立った。

 その窓から見える景色を見つめる国王の背中を、ルークはただ見つめていた。

「…王様…?」

 恐る恐る声をかけると同時に、彼が振り向いた。

「俺、オマエに感謝してる」

 その言葉にルークは「え?」と裏返った声を漏らした。

「オマエがガブリエルを連れて来てくれなかったら、俺は一生アイツに出会えなかった」

 国王が悲しそうな微笑みを浮かべたのは二回目だった。

 一回目は、夢の中で出会った女のことを話してくれたときだ。

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