王に愛された女




 フリーゼル伯爵はそれだけ言って、フィオーレから目を逸らす。

「…儂はとめようとしたんだ。だが、できなかった。…お詫びと言ってはなんだが、儂の力でオマエが王宮へ入れるように上へ持ちかけてみよう」

 フィオーレはそれを断わった。

「そんなお詫びなんかいらない。俺は自分の力で王宮へ入って見せる」

 フィオーレは言い残して歩き出す。

「なら!」

 フリーゼル伯爵の大声に、フィオーレはもう一度足を止めた。

「なんだ?」

「…図々しいかもしれないが、メランコリーの婚約者になってくれないか?無理なことかもしれない。だが儂は過去の歪(ヒズミ)を埋めていきたいんだ…考えてくれないか?」

< 241 / 267 >

この作品をシェア

pagetop