王に愛された女




 耳を疑った。

 王とガブリエルが、死んだ…?

 その事実は、あまりにも想定外のことだった。

「王様が亡くなられた後、王妃様も後を追うように…」

 そう言って女は泣きだす。

 それ以上聞きだすことは、到底できなかった。

「…ありがとう…」

 フィオーレはそれだけ言って、その場を離れた。

 王宮に背を向けて、馬の手綱を強く引き、歩き出す。

「……フィオーレか?」

 その言葉に、フィオーレは足を止めた。振り向く。

「…伯爵…」

 そこには、フリーゼル伯爵が立っていた。

「父さんと母さんを殺したアンタが何の用だ」

「…儂が、ルークを止めていれば、こんなことにはならなかった」

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