星月夜のマーメイド
ひと通り仕事を終えると、急いで車に乗って家とは反対の方向へ走り出した。
学校からは30分程で着いたそこは、『浜岡果樹園』と小さく書かれていた。
辺りはすっかり夕方になっていた。
果樹園が高台にあるためか、緑の木々の隙間から少し海が見えた。
海は夕日が反射し、キラキラと輝いていた
果樹園の中を少し入ると門があり、“ご用の方はインターホンを”と書かれていた。
ピンポーン
インターホンを押すと、中から年配の女性の声がした。
「山際中学の相田と申します。遅くなり申し訳ありません。」
「はいはい、娘がまだ園の方にいると思いますので、中にどうぞ。」
事前に電話で連絡してあったため、すんなり中に通してくれた。
中まで歩いていくと、脚立に乗る人影が見えた。
会いたくて会いたくて、ずっと待ちこがれていた人。
その姿に見とれながら、何も言わず脚立まで近づいて行った。
脚立の女性が光輝の方へ振り向いた。