星月夜のマーメイド
「う…そ。何で…」
そう言い終わる瞬間、バランスを崩し下に落ちてしまった。
しかしその下には光輝がいた。
「おっと、セーフ。」
お姫様抱っこされた形になったエレンは、不思議そうな顔で光輝を見つめていた。
「また脚立で事件だな。」
光輝はエレンを抱っこしたまま、軽くお辞儀をした。
「初めまして。山際中学の相田です。」
「…今日視察に来る先生って、光輝君だったの?」
「そう。俺、念願の教師になったんだ。
教育学部に編入し直したりして、少し時間かかっちまった。」
エレンの瞳はウルウルと滲み出し、かすれた声で言った。
「良…かっ…たねー、念願の…教師になった…んだー。あーうまく声が出ない…。」
チュ
光輝は抱っこした状態のエレンの頬に、ついキスしてしまった。
「…あ、ごめん。あまりにも可愛かったから。」
エレンは頬をさすりながら、「汚れてるのに。」と口を尖らして少し膨れた。
そんなエレンがますます愛しく感じた。