トイレの神様‐いいえ、ただの野次馬です‐




彼はこの事実に、言葉を失っているようだった。




「………いかがするか。そなたが望むならば、学校や警察に言えばよい」





「…………いえ」




彼ははっきりした声音で言ってのける。




「彼女……古賀さんがお金目当てだったとしても、僕は幸せでした」



ほんとに、過去を懐かしむような幸せそうな声でした。



「勝手に信じて、勝手に裏切られた気になって。僕は、彼女を責める気はありません。……お世話になりました」




そう言って、扉を開ける彼を呼び止める。




「ひとつ伺いたい。そなたはまだ、古賀瑞穂に貢ぐのか」





「………僕は、お金のからまない友人を作りたいと思っています」





「……左様か」




扉を開けて出て行った彼を、今度は止めない。




< 20 / 252 >

この作品をシェア

pagetop