グッバイ・ティラミス




泣くのを、堪えたような顔。


そういうところが、きらい。



授業中静かにしてほしいと思ってるくせに、生徒からの評判を気にして強く言えないところが、キライ。

生徒にイライラしてるくせに、強く言えないようなところが、キライ。泣いたようなその表情が、キライ。



中村先生が、キライ。
だいっきらい。



「……。」



中村先生、黙っちゃった。


ハッキリ言えばいいのに。静かにしろよ馬鹿野郎って重みのある声で言えば一発じゃん。生徒にはあとで嫌われるかもしれないけど。



でも、それは仕方ないんだよ。
誰からも好かれようなんて、無理なんだよ。特に教師なんか生徒に反感を買う生き物なんだよ。



「…意味わかんない。」



ポツリ、と独り言が漏れる。


おちゃらけた男子を前にしながら、なにも言わずに中村先生はキョロキョロしてる。

私、困ってますっていうオーラが出して。だからだれか助けて、って。



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