heart and cold~私には貴方だけ~【完】





距離は離れていくと思っていた。



『さくら』のあなたと居たら、これから先良いことなどないと思っていたから、離れてくれるのなら好都合だった。



そのはずなのに…



春休みの一件からずっと頭の中は、はるき君で埋め尽くされていた。



気にすることなんてないのに。



気を抜くとすぐに頭の中で記憶のはるき君が動き出す。



初めて会ったあの日からあたしにくれた優しさたち。



辛いときに抱き締めて、頭を撫でてくれて



思い出すことも嫌だった過去を和らげてくれた。



はるき君を見る度に響く心臓の音



『あたしはどうしてしまったのだろう』



なんて、考えなくてもわかっていた。



気付きたくなかったから、そう思うだけでやめていただけ。



あたしは、はるき君が好き。



…唇と唇が少し触れただけで、本当の気持ちが覚醒した。





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