heart and cold~私には貴方だけ~【完】





とっさに距離をとって、唇を手で覆う。



恥ずかしいとか、嬉しいとか全くない。



ただただ、悲しい。



「…ッ…」



止める余裕もない感情が涙となって流れる。



きっとはるき君はあたしを好きではない。



それなのに一瞬とはいえ、キスをしてしまった。



片思いのキスなんて…虚しすぎる。



「璃花?どうした?」



「な、でもないっの!」



顔をのぞき込もうとするはるき君に背を向けた。



こんなときに名前で呼ぶ彼はズルい。



泣いている理由がわかるはずもないのに、聞かないでほしい。



それともあたしがはるき君のことが好きだって分かってやっているの?



ならなおさらたちが悪いけれど。



はるき君はあたしのことをそういう風に見られないから、あの日



答えてくれなかったんじゃないの?





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