♡祐雫の初恋♡

「ありがとうございます。琳子さん」

 慶志朗は、琳子が涙を零して、

 落胆するのではないかと慮っていたが、

 奥床しい琳子の力強さを改めて感じた。


「こちらこそ、ありがとうございます。

 これからもお目にかかった時には、気兼ねなく、

 お声をおかけくださいませ。

 どうぞご健勝で、

 これからのご活躍をお祈り申し上げます」


 琳子は、始終冷静で、穏やかな笑みを湛えて、

 慶志朗との最後のお茶のじかんを楽しんでいた。


 幼馴染の慶志朗に、麗華という許婚が現れて、

 麗華が相手では敵わないと、

 琳子は、素直に自分の立場を学習し、弁えてもいた。


「琳子さん、お邸まで送って参ります。

 そして、ご両親に深くお詫びを申し上げます」


 慶志朗は、今になって、

 幼馴染の琳子の芯の強さに気が付くと同時に、

 琳子の真髄を見ようともしなかった自身にも気が付く。


 確かにこのまま結婚しては、祐雫が言うように、

 哀しい結末になる気がした。




< 129 / 201 >

この作品をシェア

pagetop