♡祐雫の初恋♡

「その必要はございません。

 車を待たせてございますし、

 慶志朗さまの誠意は、わたくしから、しっかりと両親に伝えます。

 慶志朗さまが、両親に頭をお下げになるご様子を

 見とうはございませんもの。

 悲しい想いは、ここに置いて参ります」


 琳子は、立ち上がると、琳子を見送る慶志朗の胸に縋(すが)りついた。

 慶志朗は、呆気にとられつつも、そのまま琳子を抱えていた。


 慶志朗は、避暑地の別荘で、

 祐雫を胸に抱いた時のことを思い出していた。


「ありがとうございます。

 一度だけ慶志朗さまに抱かれとうございました。

 琳子一生の思い出になりました。

 では、ごめんくださいませ」


 琳子は、爪先立ちになり、慶志朗の頬に口づけすると、

 振り向かずに茶室を出て行った。


 慶志朗は、琳子の大胆な行動に動転して、

 しばらくそのまま立ち尽くしていた。



  

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