♡祐雫の初恋♡

「桜河さまに数学を教えていただきたくて。

 祐雫さんにお聞きしたのでございますが、

 桜河さまでございましたら解るのではと

 薦めてくださいましたので」

 環は、臆することなく優祐を見つめて話しかけた。


「祐雫に解けない問題が、ぼくに解るかなぁ。

 祐雫の薦めなら、断るわけにもいかないね。

 図書館で見てあげよう。

 じゃあ、杉、山野、また明日」


 優祐は、一緒にいた級友たちに手を振り、環に微笑む。


 級友たちは、囃(はや)し立てるように、

 優祐の肩を叩いて帰っていった。


(私は、数学の問題なんて質問されてございませんし、

 私に解けない問題が、優祐に解けるわけがございませんのに)


 祐雫は、こころの中で呟いて、

 探偵さながら、気付かれないように、優祐と環の後を追った。


 優祐は、資料室の奥手にある学習室へと環を導き、

 椅子を引いて座らせる。


 学習室は、無人でひっそりと静まり返っていた。

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