♡祐雫の初恋♡

「あっ、失礼」

 佇む祐雫にぶつかった藤原真実(まさみ)は、

 手にしたシャンパンを祐雫のドレスに誤って零し、

 胸ポケットから取り出したチーフで、祐雫のドレスを拭う。


「他所見をしていました、申し訳ない」

 真実は、恐縮した表情で、丁寧に祐雫のドレスを拭い、頭を下げる。


「こちらこそ、申し訳ございません。

 私がいたしますので、どうぞお気遣いなさいませんように」

 祐雫は、小さなメモをバッグの中へ大切に仕舞い、

 代わりにハンカチを取り出した。


「お似合いのドレスに、

 染みができてはいけませんので」

 真実は、てきぱきと飛沫を拭い取る。


「応急処置はしましたが、

 今度代わりのドレスを贈らせていただきます」

 真実は、顔を上げて、祐雫を見つめる。


「そのような必要はございません。

 お心遣いありがとうございます。

 当家には、染み抜き名人がおりますので」

 祐雫は、恐縮して、頭を下げた。


「アクシデントで、自己紹介を忘れるところでした。

 藤原真実(ふじわら まさみ)です」

 甘い顔立ちの青年が祐雫に微笑みかけている。


「桜河祐雫でございます」

 祐雫は、慶志朗の余韻から醒めて、相手を真っ直ぐに見つめた。

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