♡祐雫の初恋♡

「詩乃さんが気に入ったのに残念ですが、

 明日帰るそうです」


 慶志朗は、これ以上詩乃から乗せられないように、

 無表情で答えた。



「まぁ、さようでございますか。

 坊ちゃま、残念でございますね」


 詩乃は、「残念」を強調して発音する。



「また森が静かになるだけのことです。


 それから、詩乃さん、

 用事を思い出したので、

 ぼくも明後日には屋敷に帰ります」


 慶志朗は、祐雫のいない避暑地にいても、

 興醒めした気分になるだけだと感じて溜息を吐いた。




< 45 / 201 >

この作品をシェア

pagetop