♡祐雫の初恋♡

「桜川の桜並木も素晴らしいけれど、

 桜池の桜林は、また素晴らしいですね。

 水面に桜の花が映えて、ゆったりとこころが落ち着きます」


 慶志朗は、桜池に向かって深呼吸する。

 こころの塊が砕けて、融けて行くように感じられた。


「麗華さまと琳子さまは、どちらもお綺麗な淑女でございますね」


 祐雫は、一番気がかりなことを慶志朗へ質問した。



「父と母が勝手に一人ずつ選んだ許嫁候補です。

 僕は、どちらとも親しくさせてもらっているけれど、

 許嫁とは名ばかりです。

 祐雫さんなら、どちらを選びますか」


 慶志朗は、きらきらと煌めいている遠くの桜池の水面を

 見つめて答える。


 時折、そよ風が桜の花びらをひらひらと水面へと運んでいた。



「私は、少しお話をさせていただいただけでございますので、

 判断が付きかねます。

 それに私が御二方を選択させていただくなんて、

 おこがましゅうございます」


 祐雫は、返事に窮した。

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