♡祐雫の初恋♡
「慶志朗さまの初恋は、いつでございましたの」
祐雫の問いかけに慶志朗は、不思議な気分に陥っていた。
「初恋なんて、考えたこともなかったですよ。
祐雫さんの初恋は……」
「まぁ、お考えになられたことがございませんの。
私は、初恋とは少し違いますが、
小学六年生の時、
青空のように広いおこころの鶴久病院の柾彦先生に憧れてございました。
柾彦先生は、その後すぐにご結婚されましたの。
柾彦先生のように御医者さまになりたいと考えたこともございます」
(本当の意味での初恋は、慶志朗さまでございます)
祐雫は、こころの中で、熱く呟いていた。
「嵩原さまは、世界を味方につけていらっしゃって、
何も悩み事がない御方だと思ってございました」
慶志朗は、祐雫に包まれた右手を左手で包み返した。
祐雫といる時間は和やかに流れていた。
慶志朗を取り巻いていた「最速」の時間が遠い過去のように思えていた。
このまま桜池に佇んでいると、
時間が止まるのではないかとまで感じられた。