奏でる場所~SecretMelody~
『なぁ、陽輝?うちの事好き?』



『んー?好きやでー?』



『やんなっ!良かった…。うちも陽輝の事好きやでっ?』



『はは。お前、ほんま可愛いなぁ~笑。』



『えへへっ。』



何気ない、幸せそうなカップルの会話。



平和に過ごしていた…ハズだった。



この時にはもう、俺の知らない所で悪夢は始まっていたんだ。



―――――



『あんたさーちょっと調子乗り過ぎちゃう?』



『え…?』



『陽輝様と付き合ってるからってさー』



『ちょ…うちはそんなつもりじゃ…。』



『だまれよ!!』



ドンッ!



彼女はクラスメイトに押され、尻もちをつく。



『いった…。』



『お前なんて死ねばいいのに!陽輝様とお似合いちゃう事ぐらい分かれや!!』



―――クラスによる陰険なイジメ。



それが毎日のように彼女を襲った。



このことを知った俺はとっさに言った。



『俺がお前を守るから!ごめん…。お前に辛い想いばっかさせて…ごめんな…。』



『うん。うちは大丈夫!陽輝と一緒やもん。ありがとうね。』



そう約束してのに…、守りたかったのに…。



俺は次の日、急な発作で入院生活が再び始まった。



―――守られへんかった。大切な人を。



俺の見えない世界で、彼女は虐められ続けている。



その想像と、日に日に増していく、彼女の痣。



もう、俺自身も耐えられなくなった。



だから、俺はその子と別れた。



彼女も苦しかったのか、すぐに俺の気持ちを承知してくれた。



すると…パッタリとイジメは無くなった。



俺はこの時思ったんや。



――もう、付き合わん方がいいんかなって。



…何でこんな体に生まれたんやろうな。



好きな人一人すら、守ることの出来ないこの体。



“カッコいい”“イケメン”



そう言われ続けたこの顔。



好きな女を傷つける道具にしかならへん。



…。



神様…?



俺は人を好きになったらあかんのか?



何でこんな体に生まれたん?



今までの人生、入院の方が…苦しみの方が長くて、充実してたなんて言われへんやん。



俺は結局好きになった人を不幸にしてしまう。
< 151 / 233 >

この作品をシェア

pagetop