奏でる場所~SecretMelody~
~奏side~


「やっと夜になったぞ♪」



毎日向かっている場所。



誰にも秘密。



坂下にも、立花にも、陽輝にも、宙にも…



誰にも教えていない、本当の自分。



でも、たった一人、知っている人がいる。



名前も知らない、男の人。



初めて、自分の情けを、自分の秘密をあかした人。



なんでか分からなかったけど、この人なら、大丈夫って。




そう思えた。



――ガチャ…



…今日も真っ暗。



奏はこの部屋のちょうど真ん中あたりにあるものの中から、一つ選んで、ポンと押す。



――ポーンッ…



ふふっやっぱりいい音してる。



私のこの学校で見つけた、お気にいりの“ピアノ”。



ここは私のとっておきの場所。



少し隠れた場所にある、秘密の音楽室。



…今日も“あの人”来ないのかな…?



毎日会っていた男の人は、最近、ここに来なくなっている。



「どーしたんだろ…?私に飽きちゃったのかな?」



…これが本当の私。



一人称は私。



“奏”なんて、人の前でしか言わない。



そして、あんな、男勝りでサバサバした私も、本当の私じゃない。



すっごく弱くて、おとなしい…どっちかというと“お嬢様”ってイメージのつくような人柄。



何で、いつもは別人格を演じているかって?



それは、秘密。



皆の想像にまかせるよ。



でも、一つだけ。



最近の私は、自分がどっちが本当の私なのか分からなくなってきている。



…もしかすると、元気な女の子に憧れているのかもしれないね。




でも、この私を打ち明けてもいいかなって。



陽輝、君にだけ思えたんだよ。



でも、少しの間はまだ言えない。



宙が言っていた、私が陽輝の事が好きって事。



本当はずっと前から想っていたのかもね。



もしかしたら、初めてあったあの瞬間から。



…クスッ



私って鈍感だな――…



そんなことを思いながらも、スラスラと奏でていく沢山のメロディー。



私の意思なく勝ってに動く指。



…これも、家族の血なんだろうなー…



私は弾きながらも、チラっと他の楽器を見る。



…あの楽器を早く奏でたいな…



って…ははっ



一生かかっても無理かもしれないね。



…ねぇ、神様?



私はいつになったら自由になれますか?
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