きみに会える場所~空の上ホテル~
眠りに誘われて
もうダメ。眠すぎる。

本をばさりと閉じて辺りをぼんやりと眺める。

ここは、私が通っている青葉学園高等部の図書館。
誰もいない。まあ当然かも。
春休み入ったばっかりだし。

カウンターの向こうで、図書委員の女子が身動きひとつせずに文庫本を読んでいる。

開け放した窓から、野球部やサッカー部の部員たちの声が響いてくる。

風はほんのりと暖かい。
絵に描いたようなのどかな午後。

「うーん」

大きくのびをした。

この頃、すぐに眠くなる。朝も昼も夜も関係なく眠い。
自慢じゃないけどいつでもどこでも一瞬で眠れる。

母さんは、「たるんでるのよ」と言う。「そんな調子で大学受験、大丈夫なの」とも。

正直、まだ「受験」って言われても、ピンとこない。
難しいこと考えようとすると、すぐに頭の中がもやっとして眠くなる。
多分、母さんが言うように、たるんでるんだろうなあ。

「ふわ~ぁ」

大あくびをしてテーブルに突っ伏した。

ほっぺたがひんやりして気持ちいい。
背中はぽかぽか暖まってる。



ああ、眠りが私を呼んでいる。

私は、うっとりと目を閉じた。
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