きみに会える場所~空の上ホテル~
「ん? 何が?」

カナタさんはぽかんとした顔で、私たちを見回した。

「今、困った困ったって」

サキさんに指摘されたカナタさんは、ああ、と目を伏せた。

「実はね、本部から連絡があって、奈美さんの代わりのスタッフが用意できないっていうんだ」

「えっ、そんな」

サキさんが手を口にあてた。レイも渋い顔をしている。

「おれら三人だけで回すのはいくら何でも無理だろ」

「そうなんだよね。お客様の予約は入ってるし、どうしたものか・・・・・・」

三人とも顔つきが暗い。

「あ、あの・・・・・・」

私はおずおずと手を挙げた。

カナタさんがふっと顔を上げた。

「ん? どしたの、美緒ちゃん」

「私にお手伝いさせて下さい。奈美ばあちゃんの代わりの人が来るまで」

だって、それしかない。

「お掃除でも洗濯でも何でもやりますから!」



カナタさんは、ぽんと手をたたいた。

「ああ! その手があったか」

レイが眉間にしわをよせた。

「おい、それはまずいだろ」

カナタさんはきょとんとしている。

「どうして? どっちにしろ、この問題が解決するまで美緒ちゃん戻れないんじゃないの? なら働いて助けてもらうしかないよ。はい、決定」

「お前っ、そんな簡単に決めんなよ」

レイがますます不機嫌になっていく。そんなレイを見て、私の気持ちも沈んでく。

そんなに私がここで働くことが嫌なのかなあ。

しかし、カナタさんはレイの不機嫌なんて全く気に留めてない。むしろ楽しそうにレイの顔をのぞきこんでいる。

「あれー? 支配人の決定が不服なのかなあ、レイくんは」



し、

支配人ー?!

思わずまじまじとカナタさんを見た。

「空の上ホテル規約1 支配人の決定には絶対服従、だよねー?」

うわあ、カナタさん本当に楽しそう。それに引き換え、レイは唇をかみしめてる。

まるで大人と子供だなあ。
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