きみに会える場所~空の上ホテル~
「確かによその世界の人にホテルの仕事を手伝ってもらうのはどうかと思う」

今まで黙っていたサキさんが考え考え言った。

「でも、それしか方法がないのよね。ずっと分身してるのも大変だし」

あれ。サキさんも分身できるんだ。・・・・・・もしかして、レイも?

カナタさんは、よしよしとうなずいた。

「じゃ、決まりってことで。レイもいいね」

「・・・・・・ああ」

レイは仏頂面のままぼそりと言った。

「それじゃあ、美緒ちゃん、補充の人が来るまでよろしくお願いします」

カナタさんが私にぺこりと頭を下げた。

「こちらこそよろしくお願いします」

私もあわてて頭を下げた。



うれしいような、こわいような、複雑な気持ちになった。

うれしいのは、レイやみんなの顔をいつでも見られること。もっといろんな話をしたいし、もっとみんなのこと、知りたい。

こわいのは、私のことも今までよりずっと知られてしまうこと。退屈で平凡で、何のとりえもないってことがすっかりわかってしまったら、みんな、話もしてくれなくなっちゃうんじゃないかってこと。

母さんや、父さんや、学校のみんなみたいに。

悪いのは自分だから、誰のこともうらんでない。どんくさい私が悪いんだ。

気の利いたことひとつ言えない。うまいこと冗談も出てこない。私がしどろもどろしている間に、話題はどんどん変わってく。ようやく何か発言しても、その話はすでに終わってる。間の抜けた空気が私を中心にして広がっていく。

ここは、とても居心地のいい場所だ。私を嫌う人も見下す人もいない。レイだって、言い方はぶっきらぼうだけど、言ってることはいつも間違ってない。

でも、私のことがすっかりわかってしまったら、みんな変わってしまうかもしれない。そう思うと、胸がどんよりと重かった。

だけど、自分から助っ人を買って出た以上、みんなの役に立ちたい。








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