きみに会える場所~空の上ホテル~
私は振り返った。レイがこっちを見るかもしれない瞬間に、後ろを振り返った。
「あ、サキさん。はい、お届け物です」

私はサキさんにハンカチを渡した。

サキさんは無言でハンカチをささっと開くと中を見た。そしていきなり抱きついた。

「ありがとー、美緒ちゃん。見つけてくれたのね」

私は真っ赤になってかちこちに固まってしまった。こんなダイレクトな表現、今までされたことないよー。

「・・・・・・。そ、そんな大したことじゃないよ」

やっとの思いでそうつぶやいた。

サキさんは体を離すと私を見てにっこりと笑った。

極上の微笑。疲れなんか吹っ飛んじゃう。

「あ、そうだ」

私はパン、と大げさに手を打ち鳴らした。

「これで回転扉を通り抜けることが出来たら、私の推理は間違ってなかったってことだよね」

「えー、もう帰っちゃうの~?」

サキさんがすねたように言う。社交辞令かもしれないけど、なんかうれしい。

「それじゃあサキさん、バイバイ」

笑顔で手を振る。あくまでも後ろは振り向かない。絶対に。

「回転扉、通れなかったらなぐさめてあげるね」

サキさんが怖いことをさらっと言う。

私は、ははっと口だけで笑って回転扉に向かった。

背中ががちがちにこわばってる。絶対に後ろは振り向かない。・・・・・・レイがいてもいなくてもつらいから。

サキさん、ナミばあちゃん、名前も知らない男の人、バイバイ。

・・・・・・バイバイ、レイ。

私は、回転扉をくぐった。
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