祈りの月
「! ――カイッ、右側、見てみろ、海の中!!」

 思わず、大声で叫ぶ。

「どうしたんだ?」

「いいから、早く見てみろって!!」

 ドゥリーに促されて、カイは船内から身を乗り出して海面を覗き込んだ。

(!! な――まさか・・・・・・!)

 信じられなかった。

 船に平行して走る、黒い影。

 イルカ、だった。

 ここ数十年、目撃情報のなかった。

「やっぱり、イルカだよな!? 生きてたんだ・・・・・・!」

 ドゥリーがカイの隣から覗き込んで、興奮したように目を輝かせた。

 当然だ。

 研究者たちの間では、もうイルカは絶滅したと思われていたのだから・・・・・・。

 すべるように、海の中を泳ぐ姿。

 イルカは船と同じスピードで、つかず離れずうまく泳いでいる。

 カイの脳裏に、昨夜の月明かりが甦る。

 少女の、笑顔も・・・・・・。

 その瞬間、

「レイア――!!」 

 カイは無意識に、少女の名を呼んでいた。


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