祈りの月
 ぱしゃあん・・・・・・!


 彼の呼びかけに答えるように、大きな水音が上がり、黒いイルカの体が宙に飛んだ。

 大きな水しぶきが上がる。

 なめらかな曲線の体。

 黒く、大きな瞳がカイと視線を結んだ。

 澄んだ、瞳。

 ――レイア、だ。

 カイは確信した。

 間違いなかった。

「ドゥリー、船を止めてくれ!」

「! ・・・・・・分かった!」

 ドゥリーが操縦室に駆け込んで、すぐに船が停止した。

「レイア・・・・・・?」

 カイは船から身を乗り出すと、海面から顔を出しているイルカの鼻先に手を触れた。

 なめらかな冷たい感触。

『おはよう、カイ』

 頭の中に、レイアの声が響く。

 聞き間違えるはずがない、昨夜と同じ声。

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