祈りの月
 夜になって、月が昇った。

 昨日の満月より、ほんの少しだけ欠けている。

 惑星ティルシアの月の周期は24日間だ。

 24日間で、月は満ち欠けを繰り返す。

 研究所の後片付けを終え、カイが砂浜に出てきたのは、もう真夜中近かった。

 水平線から上がった月も、だいぶ空高くなっている。

 月明かりの中、海岸を見渡すとカイはすぐにレイアの姿を見つけ出した。 

 砂浜に座って海を眺めている。

「レイア」

 後姿に声をかけると、レイアが振り返って微笑んだ。

「おつかれさま、カイ」

「ずっと待ってたのか」

 カイも隣に腰を下ろす。

 そんなに寒い季節ではないが、海風にずっとあたっていれば寒いはずだ。

「待つのは平気・・・・・・海って、外から見てるとぜんぜん飽きないのね」

「そうだな。俺も海を見るのは好きだよ」

 月光を反射して、硝子のようにきらめく海をカイは眺めた。

 深い黒い輝きが、レイアの瞳に似ていると思う。

 綺麗だ。

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