祈りの月
「仕方ないの・・・流れだから。でも―」

 一度、言葉を区切り、レイアは不思議そうに口を開いた。

「どうして、こんな海になってしまったのかしら・・・・・・?」

 感情のない、その疑問を耳にして、カイは心に強い衝撃を受けた。

「! ―知らないのか?」

 とっさに尋ねしまってから、思う。

 この海に何が起きたのか、・・・・・・レイアは知らないのだ。

 その初めて知った事実にカイは愕然とした。海の住人たちは、大切な住処を人間が奪ったことを知らないのだ、きっと。

 何も知らず、汚染された海で苦しみながら、生き続けているのか・・・。

「――俺たち、地球人のせいなんだよ。海に、毒を流してしまった・・・」

「毒?」

 嫌な言葉に、レイアが細い眉をひそめる。

「そう。毒だよ。俺が研究を続けているのは、毒を中和する方法を見つけるためなんだ」

 カイは目を閉じた。

(罪を―・・・)

 ついに告白する時が来た。

「レイア、明日、連れて行きたい所がある」

 カイは決心して、そう告げた―。
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