祈りの月
「でも、それはカイのせいじゃないわ!!」

 レイアの強い言葉に、カイは自嘲的な笑みを浮かべた。

「本当にそう思うか?」

「思うわ。カイのせいじゃない・・・・・・だからそんなに傷つかないで」

 レイアは手を伸ばしてカイの頬に触れた。

 心が痛かった。

 カイの痛みに強く共感して、レイアは息が詰まるような思いだった。

「だから、いつも苦しんでたのね・・・・・・?」

 海に対してカイが抱いている自責の念――それがカイを苦しめている一番の要因だったのだ。

 だから、カイは海を見るたびに自分を責めて、心が傷ついてしまう。

「そんな必要、ないのに」

「・・・・・・俺は――地球人だよ、レイア。この体には――自分たちの故郷さえも破
滅させた血が流れているんだ」


 地球の空は、鳥も飛べないほど汚染されたと聞いた。

 美しい惑星ティルシアも、そうならなかったとは、決して、言えない。

 鳥も飛べない空。

 生き物の住めない海―・・・。


 そんなものは、死の惑星だ。

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