祈りの月
 そんな無に近い惑星に、なってもおかしくなかったのだ、ティルシアは――地球人の手によって。

「もし、海の生き物がすべて死に絶えたとして・・・・・それでも、君は俺を責めないと言えるか?」

「責めないわ」

 即答、だった。

 カイはレイアの目を真っ直ぐに見やって、彼女が心からそう思っていることを悟る。

「君の仲間たちはもういないのに・・・・・・?」

「流れには逆らえないから」

「・・・・・・家族が死んでしまったのに?」

「しょうがないのよ」

 諦めきったレイアの言葉に、カイは強い反発を覚えた。

「しょうがないって・・・・・・!」

 それでは、カイの研究していることは無駄なのだろうか。

 海を救えると思って、持てる時間の全てを研究に使ってきた今までの自分を否定されたようながして、カイは身体の奥から怒りが沸き起こるのを感じていた。

 その衝動に耐え切れず、カイは大きな声で叫んでいた。
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