ハッピーエンドの描き方
Chapter 1

1-1

「もう片方の靴は、ここにあります」


私の手の中で、小さなガラスの靴がきらめいている。

目の前にいるのは、義理の母と二人の義理の姉。

そして、割れてしまったガラスの靴を前にして困り果てていた初老の男性。

イギリス王室の制服のような容姿の男は、ガラスの靴を握る私を見て顔を輝かせた。


「こちらへ……」


男に促されるまま、用意された椅子に腰かけ、ガラスの靴を男に差し出す。


「失礼いたします」


ガラスの靴を受け取った男は、ゆっくりとした動作で私の足に靴をはめる。

姉たちには小さすぎたその靴は、私の足にピッタリとはまった。

義理の母と姉たちからは、悲鳴に近いような声が上がる。

反対に、男は満面の笑顔で私の手を引いた。


「王子との結婚を、していただけますか?」


私が頷くと、どこからともなく教会の鐘が響く。

いつの間にかお城についていて、私の傍らには若い王子が付き添い、幸せそうな笑顔を浮かべていた。

目の前には牧師さん。

純白のドレスに身を包んだ私を、国中の人々が見守っている。

最高の気分だった。

目の前にいる王子の輝く目を真っ直ぐに見つめる。

彼は私の両手を柔らかく握り、暖かい声で語りかけた。



「やっと、あなたに出会うことができた……。 

お名前は?」

「私の名前は……、守野薫」


頭一つ分私より背の高い王子は、輝く笑顔を向ける。

そして、ベールをめくると、ゆっくりと私に顔を近づけてきた。

しかし、背の高い王子の唇は、なかなか私のもとに来ない。

我慢できずに、なれないヒールを履いた足で背伸びをする。

もう少しで、王子様と真実のキスが交わせる……。

そして、前につんのめった。

バランスを崩したわたしは、そのまま前に倒れ、頭から床に着地をする羽目になった。
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