ハッピーエンドの描き方
恋愛どころか、アルバイトまでうまくいかず、半年でやめてしまう始末。

これだけは、と頑張った学業も中の上。

胸を張って自慢できるようなものは何もない。

高校にいた頃、決まりきったスケジュールで動かなければならない生活にうんざりしていた。

大学に行けば、自由に動ける。

やりたいこともできる。

そう思っていた私の前に用意されていたのは、高校時代と大して変わらない毎日。

それどころか、さらに拘束される時間が多くなっている。

憧れのキャンパスライフの妄想は、入学早々に崩れ去った。


もうすぐ二十歳。


このままでいいのだろうか……。


思わずため息をついてしまった自分に気づき、無理やり顔を挙げる。

何を暗くなっているのか。

せっかくの春休み。

今まで必死になって走り抜けてきた大学での一年間を振り返る、という名目で、自宅でダラダラするにはもってこいの時期。

少し気分が上がらないときにやることは決まっているじゃないか。

映画の世界に、逃げること。

今すぐにでもレンタルビデオ屋に駆け込みたい気分だったが、必修授業の教授のオフィスに立ち寄り、採点済みのレポートを受け取ることになっている。

そして、あの教授の場合、立ち寄って、成績を受け取るだけでは済まないことは目に見えていた。

しかし、教授のご機嫌取りも重要な学生の仕事である。

社会においての、「正しい胡麻の擦り方」まで伝授してくれるとは、なかなかありがたい大学だ。

明日はどうせ休みだ。

遅くなっても構わないだろう。

私は、教授のオフィスがあるビルへと足を向けた。
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