あの子





「ちゃんと覚えとけ」


今度は僕が、クラブ棟の方を一瞥。

陸上部が、規則正しく並んで走ってる。



「俺の方が、借りが1個多いんだよ」





彼女の膝から見える黒い布。

それは、あの日の破かれたジャージの膝からも見えてて。


多分、きっと、絶対、同じもので。



なんで今まで気づかなかったのか。



コイツのこと知ってた。


2年も前なのに。







…………借りを返さないとな。










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