澄んだ空の下で

「何って、久々に会ったんだから声くらい掛けるでしょ?」


いや、そんなの頼んでもないし、余計なお世話。

無視してくれるほうがよっぽどの親切だよ。


…なんの嫌がらせ?

あの日、以来…話しても居ないのに。


「…-――っ、」


その瞬間、思わずハッとしてしまった。

サエコの瞳がスッと動いた事に。


そして。


「ね、ねぇっ…若菜?」

「……」

「後ろに居るのって、恭先輩だよね?」

「……」

「ちょっと、どうして若菜と居るの?」

「……」

「うっそ、まじヤバイんだけどー…超イケメン」


やっぱし、そうだった。

サエコはここぞとばかりに目を輝かせてチラチラと恭を見る。


サエコは久しぶりだから、あたしと話したんじゃない。

あたしじゃなくて、恭と居るあたしに話したんだ。


それが目的。


「ねぇ、若菜どうして?」


腕を強く揺すられる。

その掴まれた腕が自棄に嫌で、


「あの人とは何もないから」


素っ気なく返して、スッとサエコの腕を払う。

そして、足を進めた背後から、


「ねぇ、若菜…まだ怒ってんの?」


サエコの声が耳に張り付いた。

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