澄んだ空の下で

「じゃ、とりあえず髪のセットするから座ってね」


ヒッティングルームに入るなり、そう声を掛けた麗美さんの指示に従って、椅子に腰を下ろす。


「相変わらず綺麗な髪してんねー」


麗美さんが髪に触れながら綺麗に纏めていく。


「長さも変わってないですけどね」

「そうだね。若菜ちゃん長い髪好きだもんね」

「んー…好きって言うか、ただ切れないだけです」


苦笑い気味にそう呟くと、麗美さんはフフッと笑った。


「だよね。あたしも切れない。勇気いるもんね。それにこの仕事してたら切れないんだよ」

「そうですね」

「ねー、若菜ちゃんは卒業後どうするの?」

「卒業後?」

「そう」

「いや、まだ何も…」

「だったらここで働かない?若菜ちゃん、慣れてるし全然大丈夫だし」

「あー…でも、何も考えてなくて」

「ま、そうだよね。けど、考えてみたら?若菜ちゃんの評判いいから1番になれちゃうかもよ?」

「いやー…」


首を傾げながら声を漏らすと、麗美さんは柔らかい表情をした。


「はい。オッケー、出来たよ」


目の前に移る自分がまるで別人。

麗美さん一人で仕上げたアップの髪は凄く盛られてて、化粧は大人なメイクに仕上げられている。


…やっぱ、いつみても思うけど、あたしじゃないな。


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