澄んだ空の下で
「…ちゃんっ、若菜ちゃんっ!」
グっと腕を掴まれた同時に、ドクンと心臓が高鳴る。
「……っ、」
ハッと見上げた先に見えるのは、少し顔を顰めた美奈子の顔だった。
「あ、…ごめん」
「どうしたの?信号、青だよ?」
前方に見える信号機は既に青に変わっていて、次々とあたし達を追い越して人が慌ただしく歩いて行く。
「あ、…うん」
少しづつ足を進める。
行きかう人達が自棄に邪魔で通り過ぎてく。
その瞬間――…
「……っ、」
ドクンと心臓が高鳴った。
一瞬にして目の前から来た恭と視線がかち合う。
だけど、その視線を逸らしたのはあたしだった。
恭の目が、何かを言いたそうで。
何かを聞きたそうで、あたしは咄嗟にその視線を避けてしまった。
だけど、そうじゃないでしょ?
聞きたいのはあたしだ。
誰ですか、その人。
そんなどうでもいい様な事を一瞬でも思ってしまったあたしが、何故だか分かんなかった。