澄んだ空の下で
「来ないでっ!!」
振り向かずにそう大声を出し、
「…お願い、…お願いだから来ないで」
続けて小さく振り絞った。
顔なんて見なくても分かるの。
声を聞くだけで、わかるの。
係わっちゃいけないって、そう思うけど、やっぱし顔を見ると会いたくなるから。
だから、来ないで。
…恭。
「何があった?」
「……」
「…若菜?」
ドクンともう一度心臓が揺れる。
今までまともに言われた事もない自分の名前。
こんな時に呼んじゃって、こんな時に呼ぶのはせこいよ。
恭に背を向けたまま息を整えようとする。
振り向く事なんて出来るわけがない。
こんなみだらなあたしを見たら、どう思うのか。
そう思うと余計に怖くなって、どうしようもなかった。
そしてその少しの沈黙を破ったのは秘かに聞こえるスマホのメロディー音。
聞き覚えのある音はあたしのスマホで、それさえも手にする事は出来なかった。