澄んだ空の下で

「…恭?」


その行為に途惑って、見下ろすあたしは小さく呟く。


「キスしてい?」

「…聞かないでよ、そんな事」

「了解なしにって言っただろ」

「言ったけど…実際聞かれると困る」

「訳わかんねー奴」


そう言ってグッと寄せられた瞬間、唇が重なった。


心ん中では戸惑いばかりなのに。

でも。ただ、ずっとこの人とこうしていたかった。


恭とずっと二人でいたかった。


だけど、次第に溢れだすよく分からない感情。

この人と居ると、また沢山の被害を受けるんだろうと思うと、また変に涙が溢れそうだった。


一緒に居ちゃいけないって分かってるのに、感情が言う事をきかない。


ただ好きだから一緒に居たい。

ただ好きだから近くに居たい。


そんな簡単な事なのに、よく分からない不安が怖かった。



「…この、泣き虫」

「……」


ゆっくりと離れる唇。

ベンチに寝転がったままの恭は手を伸ばし、もう一度あたしの涙を拭う。


「若菜の泣きたい理由って、何?」

「…分かんない」

「分かんねーのに泣くのかよ」

「涙腺、弱いんだよね」

「…俺の所為か、…ごめんな」


ギュっと抱きしめられたお互いの心臓の音が、何故だか異様なほどに聞こえた。



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