澄んだ空の下で

「分かんない。泣きたいのは恭なのにね…」

「…別にそこまで子供じゃねーし」

「嘘付き。強がってるくせに」

「…かもな。でも、お前が居ると調子狂う」

「……」

「だから本当は若菜と居たくねーの。調子が狂い過ぎて、訳分かんねー事ばかり口にする」

「じゃあ、もっと狂っちゃえば?」

「は?」

「狂っちゃえば、もっと恭の色んな事聞ける。もっと色んな事、知りたい」

「変な奴。知ってどーすんの?なんの得になる事もねーよ」

「なくても、あたしは知りたい」


フッと笑った恭の顔が何故だか、優しく見える。

この人の笑顔がもっと、見たい…


「やっぱお前と居ると調子狂うわ。今までずっと金と女には困った事ねーの」

「なに、それ。自慢?」

「確かにここまで裕福に育ったのは間違いなく親父の力。けど他は何にも教わってはいない。愛情も何も与えてもらった事もない」

「……」

「女だってそう。いっぱい寄って来るわりには俺の中身を知ろうとはしない。ただ外見だけで判断して」

「……」

「でもお前は違うんだよな…」


あたしの後頭部に手を添えた恭は不意にグッと自分の方へと引き寄せる。
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