未熟色の君たち


放課後。

「帰ろうっ、芳成」
「おう」

まだ寝ぼけた顔の芳成が、机の中に手を入れる。

「ん? ……あれ?」
「どしたー?」

私は、机の中を覗き見ている芳成をニヤニヤしながら見る。

「傘が……ない……」
「あららー。こぉーんなに雨が降ってるのに、どおすんの?」

私は、可笑しさを堪えながら澄ました顔を向ける。

芳成は、おっかしいなぁ。なんてブツブツ言いながら、机の中を何度も見たり、鞄の中をあさったりしている。

「もう。しかたないから、入れてあげてもいいよ」

私は、芳成から奪い取った傘を右手に持って、フリフリしながらイタズラに笑う。

「あ゛っ! それ、俺の傘じゃんっ」

やっと気付いた芳成が掴み取ろうとする手をかわし、教室を飛び出した。


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