ウェスターフィールド子爵の憂鬱な聖夜

「閣下並びにレディ。このようなむさくるしい場所に、ようこそおいでくださいました」

 途端に、貴婦人が振り向いた。

「パトリック?」

 彼はその貴婦人をまじまじと見返した。夢見るような大きなブラウンの瞳に、はっと思い当たる。

「ローズかい?」

 何年ぶりだろう。見違えるように美しくなって。

 思わず近づこうとした時、傍らに立っていた紳士が咳払いをした。

 そのダークブルーの目に、一瞬険しい色が浮かんだような気がした。こちらを見ながら、ハワード夫人に声を掛ける。

「あなたの息子さんですか?」

「はい、さようでございます。失礼いたしました。どうぞこちらへ」

 オリビアは緊張したように身をすくめると、驚いて突っ立っている息子に急いで商会から父親を呼んで来るよう命じた。パトリックは、慌てて外へ駆け出して行った。
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