ウェスターフィールド子爵の憂鬱な聖夜
ようやく帰りついた時には、身体がすっかり冷え切っていた。
火を起こそうにも簡易ストーブの薪もない。
せめて丘で枯れ枝でも拾ってくればよかったのに。内心舌打ちしながら最後の力を振り絞り、とにかく手持ちの中で一番暖かい部屋着に着替えベッドに倒れこんだ。
今朝ここを出てから何日も経ったような気がした。
寒い……。とてつもなく寒かった。ガタガタ震えながら、惨めさから涙が溢れる。
そう、これが現実。それじゃ今日のできごとは何だったのだろう?
「ミス・レスター、いるんですか? いたら返事してくださいよ」
部屋のドアをがんがん叩きながら自分を呼ぶ声で目が覚めた。
真っ暗だった。起き上がろうとするが全身が鉛のように重く、身体を起こすことさえできない。頭痛と悪寒がした。熱があるようだ。
まさかクリスマスに家賃の取り立てもないだろうに。だとしても、待ってもらうしかない。
彼女は痛む頭でぼんやり考えながら、再び意識が薄らぐのを感じていた。
このまま出なければ、あきらめて帰っていくかしら。