ウェスターフィールド子爵の憂鬱な聖夜
だがノックがやむと、今度は鍵を回す音がしてドアが開いた。
ローズは焦点の合わない目を入ってきた二人に向けた。
とうとう頭がおかしくなったのだろうか?
ランプを掲げたバンリー夫人に続き、戸口に姿を現したのはエヴァンだった。
「いるじゃないですか」
バンリー夫人が眉をひそめる。
「おや、どこか具合でも悪いんですか?」
ようやくしぼり出せたのは、返事とも言えないうめき声だけだった。
「こちらの殿方が、どうしても先生にお会いになりたいとおっしゃいますのでね」
夫人は後から入ってきた子爵を振り返って、気まずそうに説明を始めた。
「もう遅い時刻だから、明日になさるのがよろしいですよと、何度も申しあげたんですが、たってのお頼みでしたんでね。それにしても寒いこと! ストーブはどうしたんです?」
エヴァンは苦々しい表情で部屋を見回し、ベッドのローズに目を向けた。
厚ぼったい部屋着で毛布から半分身を乗り出したままぐったりしている。
すっと歩み寄って額に手を当てた。熱い。おまけに脈がずいぶん速くなっている。