ウェスターフィールド子爵の憂鬱な聖夜

「どうぞ。今お茶をいれます」

「あなた、子爵様とどういう関係なのよ?」

いきなり飛び出した露骨な質問に、手にしたカップがカタカタと音を立てた。

 どうにか気を静め、さっきメイドが暖炉にかけていったポットからゆっくりお茶を注ぐ。よい香りがあたりにさっと漂った。

 メアリーは椅子から身を乗り出すようにして返事を待っている。

「……わたしは以前、子爵家のお嬢様の家庭教師をしていたの。それだけです」

 しいて淡々と答え、ティーカップを差し出した。

「家庭教師? 本当に『それだけ』?」

「ええ、もちろん……」

「子爵様って優しいのね。たかが家庭教師にこんなにまで」

 お茶を飲みながら、メアリーは感心したように呟いた。ふと話題を変えてくる。

「それじゃあなた、どのくらいあの方のお屋敷にいたわけ?」

「半年ほどです」

「じゃあ、あの方のことを少しはご存知? たとえば、どんな女性がお好
みか、とか」

 ローズは目を丸くしてメアリーを見た。なんてはっきり物を言う人だろう。

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