ウェスターフィールド子爵の憂鬱な聖夜

 牧師の態度は真剣そのものだった。

 咄嗟に出かかった断り文句が思わず引っ込むほどに。

 ウォリスの真面目で誠実な青い目を見ながら、ローズは一瞬ためらった。

 今ここでイエスと言ってしまいさえすれば、自分の人生にまったく新しいページが開かれる。

 二人の間に炎のような愛はなくとも、お互いに尊敬し助け合いながら、暖かく穏やかに暮らしていけるだろう。

 この土地で一生の目標ともなる有意義な仕事とともに……。


 ローズは、そう自分を説得しようと試みた。

 だがその瞬間、彼女の中に一年前のエヴァンのプロポーズの言葉がよみがえった。

 そして、突風のように自分をさらっていったダークブルーの瞳の輝きも……。

 まだあれから一年少ししか経っていないなんて信じられない。

 本当に何もかも変わってしまった。けれどただ一つ、自分の思いだけは変わっていない。


「お気持ちはとてもありがたいと思います。でも……」

 ローズはどう言えばいいものかと迷い、懸命に言葉を探した。
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